良い物件を見つけたものの登記謄本に掛かれていた所有者は、得たいの知れぬ不動産屋さん。その名も893開発。(仮名)
S、A不動産にお願いして、見せて貰うのは良いけど最終的には仲介手数料が50万円超え。
そんな状況で、夫婦会議が始まる。
この物件が本当に良いもの且つ893開発が良い会社なら、直接交渉によって不動産仲介手数料は要らないのでは?
そんな話を妻に持ちかける。でもやっぱり不安だよねと妻。
土地を所有する893開発も仲介依頼している不動産屋さんに仲介手数料を支払う必要があるんだよな~。
(しかし不思議だなぁ、どうして893開発は仲介依頼しているのか?)
やっぱりこの物件を購入としたら、直接取引がWINWINじゃないだろうか?
という事で、思い切って893開発の門を叩く事に。
住所を調べて、夫婦で軽自動車に乗り込んで893開発を目指す。車で5分程度の所に893開発があった。
確かにあったかも知れないこの会社。2Fにある入り口を目指す。
赤レンガ色の建物がどこか冷たさを感じてしまう。
(とてもお気軽に入れる雰囲気ではない。)
お気軽に相談をする人がいるなんて、想像もつかない。
僕らは入ったらいけないドアを叩きにきたのだろうか・・・
そんなことを言っても、今更後戻りできない。
ドキドキしながら夫婦でドアを開けると中に50代の女性だろうか?
事務員さんがひとり。
「社長は、どこか行ってますね~。」
いつもこんな感じなのよという雰囲気。(社長の行動を把握していないのもいかがなものか)
事務員さんに話を伺うと、どうやら893開発は、事務員さんと社員1名そして社長さんだけのようだ。
全ての実権は社長さんが持っているようで、まさに893開発の本丸は社長さんである。
早速、社長さんに連絡を取ってもらい物件を見たい旨を伝えて頂くと・・・
「鍵を渡すから勝手に見てきて(笑)」
と社長が言っておりますと事務員さん。
鍵はどこにあるのかしら・・・と言いながら、机を探し回る事務員さん。(恐らくこの会社は、統制取れていない汗)
これはなかなかパンチの効いた社長さんの予感が。
通常不動産というのは、なんとか購入してもらうために一緒に付いてまわるのではないのか?
仮にも数千万円のお金が動くわけなんだろうに・・・
何とも拍子抜けな状況で妻と念願の物件の内見ができることに。
車を走らせ早速現地に向かう。
40歳を超えた夫婦が胸を躍らせ、こんなにワクワクすることがあったのだろうか?
(付き合って間もない頃に、初めての遠出をしたことを思い出した。)
そんなドライブも束の間、5分程度で現地に到着する。
土地の大きさの割には狭い出入口で出鼻をくじかれる。
これは、運送会社の車両はまず入れないだろう・・・
まだ残暑の9月、草木が生い茂り、やぶ蚊が飛び、庭は虫の居場所となるには絶好の状況だ。
荒れ果てた庭、止まったガスメーター、人が住んでいないことを物語っている。
立派な古い門、至る所にある庭石、松の木、上の世代が住んでいたのだろう。
(これが入り口を狭くしている要因だなぁ)
170坪余りの土地の真ん中に住居が立ち、それに付随する店舗。
(どうして、こんな場所に住居を建てたのだろうか)
離れの駐車場は屋根付き小屋付き。
古いコンテナハウスは、子ども部屋にでも使っていたのだろうか?
これは・・・
物件費のほかにも撤去費用が相当掛かりそうだ。
住居内に入る前に問題が山積みのようだと少し気が重くなった。
預かった鍵で、恐る恐る住居に入っていく。
古い建物の割には、しっかりとした柱。
見事な神棚、床材も無垢の物を使用していた。
太陽の明かりが入りにくい場所にあるトイレとお風呂はちょっと不気味である。
天井が低く、170センチそこいらの僕でも頭を打ちそうだ。
建物は2階建て。急な階段を上るとそこに10畳ほどの部屋があった。
少し揺れるんだけど、気のせいだろうか・・・
そこで見つかる雨漏りの跡。(やっぱり問題はありそうだな~)
住居と店舗部分は無理やり連結している構造でもあった。
(うまく切り分けしたいな)
とは言えこれまで見てきた中古物件より金額の割には状態が良いように感じた。
住居部分は最低限リフォームし雨漏り修理が必要だろう。
庭は一掃し砂利を敷く必要がありそうだ。
入口は広げないと運送屋さんをはじめ車の出入りが大変だ。
そんな話を夫婦でしながら、車に乗り込んだ。
妻も僕も物件を後をする頃には前向きな気持ちになっていた。
そして無事に?内見を終えた夫婦は、鍵を返却するために893開発の事務所に向かった。
到着すると最初行った時には無かった高級そうな白いSUV車が止まっていた。
もしかして、社長だろうか?
と思いながら階段を上ると、そこに70歳近くの貫禄があるおじさんがいた。
スキンヘッドに無精ひげ・・・
これは、本物かも知れない。どうやら社長さんのようだ。
たれさん夫婦は、社長に言われるがまま応接室に案内された。
撃たれるのか!?なんて思いながら、高級そうな椅子に腰を下ろした。
ここからビジネスの始まりだ!と僕のスイッチが入った。